5月号「パフォーマンス・マネジメントについて」をアップしました
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メンタルヘルス講座

【5月号】

■ パフォーマンス・マネジメントについて

今月は、働きやすい職場作りのための「パフォーマンス・マネジメント」をご紹介します。

「仕事がきっかけでうつ病になった」という方の中で、「単純な長時間労働」だけが原因でうつ病になる方は、最近では決して多くはありません。
それよりもむしろ「上司からの教育・指導のされ方」「上司からの仕事の与えられ方」「職場での人間関係」などといったことも影響してうつ病等を発症することが、実際には大半となっています(厚生労働省、2011)。

一方で、その上司の方々も「どのように部下に仕事を教えたら良いのかわからない」「絵師えているのに、部下が育たない」といったことで悩んでいることが多いです。
このような状況は、その職場生産性を低下させることにもつながり、悪循環が生まれてしまいます。
このような悪循環を改善させる方法が、「パフォーマンス・マネジメント」です。 「パフォーマンス・マネジメント」は、健全で効果的なマネジメント方法です。上司にとっては「教えやすい・効率が良い」、部下にとっては「学びやすい・働きやすい」教育を実現するものです。それが結果的に、現場の生産性の向上につながっていきます。

「パフォーマンス・マネジメント」は、行動分析学という学問に基づいており、「個人や企業、社会における人間の行動に関する問題を、『行動分析学』に基づき、効果的に解決する方法」と定義されます。1960年代からアメリカの企業で導入され始め、その後海外に広がり、最近は日本の企業も導入し始めています。

「パフォーマンス・マネジメント」の実際の内容のすべてはここでは書ききれませんが、重要ポイントの1つを挙げると、「『行動に焦点を当てる」ということです。
「やる気を出せ」「気合いだ」「意識を高めろ」などといった表現は曖昧なため、意図が伝わりにくく、職場の問題の解決につながりません。また、部下への誤解を生むなど別の問題につながることにもなります。
しかし、部下にしてほしいことや止めてほしいことを「具体的な『行動』に言いかえる」ことで、上司にとっては「自分が部下に何を期待しているのか」が明確になり、部下にとっても「上司から何を期待されているのか」が明確にわかります。

このほかにも、「パフォーマンス・マネジメント」には様々な要素があります。「パフォーマンス・マネジメント」に基づいたマネジメント・スキルを上司が身につけることは、職場の生産性の向上とメンタルヘルス対策の両方に貢献する、価値のある取り組みだと言えます。

【4月号】

■ 疾病利得について

 今月は聞きなれない言葉かもしれませんが疾病利得について書くことにしました。うつ病をはじめとして慢性的になり、なかなか病気がよくならないケースもかなりあります。そういった時に、もう一度しっかりと診断や治療法などを吟味して、今の状態を把握する必要があります。
うつ病ならば、以前にこの講座でまとめた双極性障害はないのか、あるいは人格的に偏りはないのか、ベースに発達障害はないかなど…。また、現在のストレスや状況、あるいは家族を含めた人間関係など…。挙げればきりがないと思います。

 その一つに、疾病利得の可能性も考えなければいけません。疾病利得とは、簡単に言えば、病気になっていたほうが得をするということです。
たとえば、うつ病の場合を例に挙げれば

(1)仕事に行かなくて済むとか
(2)家事や育児をやらなくて良いとか
(3)時間外労働もなく、少ない仕事のみで済むとか
(4)仕事を休んでいる期間、親から援助があるとか
(5)勉強をしなくてもよいとか

個々にいろんな場合があると思います。
 このような状況に無意識のうちに陥ってしまうことです。知らないうちに病気になっていることに満足を得てしまうことです。
このような状態になれば、当然のことながら病気は治りません。なぜならば、病気が治ることを無意識的に拒否しているのですから、いくら治療をしても効果的ではありません。

 似たような状態に、詐病というのがあります。こちらは、最初からまったく病気ではないにもかかわらず、病気を装うことで得を得ようとするもので疾病利得とは少し異なります。いずれにしても、病気ということで得を得るので、よいことではありません。

 慢性的な経過にある人の中には、このような疾病利得の状態に陥っている人も見受けられます。もちろん、簡単に疾病利得と判断することは出来ません。しかし、慢性的な経過中に疾病利得に陥らないためにも、その人が置かれている状況などをしっかりと捉える必要があると思います。なぜならば、一度、疾病利得に陥れば、なかなか改善しないからです。疾病利得に陥らないためにも十分な注意が必要と考えられます。

【3月号】

■ ジョリハの窓について

今月はジョリハの窓を紹介したいと思います。

ジョリハの窓とは、「対人間関係における気づきのグラフモデル」で、心理学者ジョセフ氏とハリー氏によって考案されました。

1.明るい窓(自分にも、他人にも分かっている姿)
 ここは自分が考えている姿と、他人に見えている姿が一致している状態を示します。個々の領域が広ければ円滑なコミュニケーションができるようになるので、ここを広げていくことがこのモデルの理想となります。

2.盲点の窓(他人に分かっているが、自分にはわかってい無ない姿)
 自分では気づいていない領域です。でも他人には分かっている姿です。他人からフィードバックしてもらい、この領域を小さくしていけると良いでしょう。

3.隠された窓(自分に分かっているが、他人には見せない姿)
 他人に隠している姿です。個々の領域が広いと、円滑なコミュニケーションが取れなくなるかもしれません。

4.未知の窓(自分にも他人にも分かっていない姿)
 誰もが持つ「人間の可能性」です。

自分が思っている自分と他人から見た自分はどのように一致しており、どのように違うのでしょうか。4つの窓について考えてみてください。

家族や友達にも聞いてコミュニケーションツールとしても利用してください。

【2月号】

■ 双極性障害について

今月は、双極性障害についてまとめることにしました。双極性障害については、以前にも取り上げましたが、その後治療薬も増えて、現在一番脚光を浴びていますので、双極性障害の薬物治療について再び少し視点を変えて取り上げることにしました。

双極性障害は、以前は躁うつ病と言われていました。簡単に言えば、うつ状態・躁状態・うつ状態と躁状態が混じっている混合状態・寛解期(症状がない状態)を繰り返す病気です。
今までのこの講座でうつ状態や躁状態の症状は取り上げましたので、今回は診断・うつ病相の治療・再発予防の3点にしぼってまとめてみました。

(1)診断
 双極性障害には、主に躁状態の程度で1型(ひどい躁状態)と2型(軽い躁状態)に分類されます。診断が難しいのは2型です。ふつうのうつ病と鑑別が難しく誤診してしまうのです。
躁状態になると自分は病気であるとの認識はなく、初診時に詳しく聞かないと躁状態があったことを認識せず、双極性障害の診断をうつ病(これを単極性うつ病といいます)と診断してしまいます。同じうつ状態でも治療法が異なるため、診断を誤れば、その後の治療はうまくいきません。ほとんどの精神科医が双極性障害のうつ病相を単極性うつ病と誤診した経験があると思います。

 なかなかうつ状態が改善しないケースでは、双極性障害のため、抗うつ薬が反応しない可能性があります。このように簡単なようでなかなか難しいのが双極性障害の診断です。さらに双極性障害は、統合失調症・境界性人格障害・発達障害などとの鑑別が非常に難しいケースもあります。

(2)うつ病相の治療
 双極性障害の治療薬は、主に気分安定薬と新規抗精神病薬があります。最近、新しく気分安定薬としてラモトリギンや新規抗精神病薬としてオランザピンやアリピプラゾールなどが躁状態の適応症を取りましたので、治療の選択肢が非常に広がっています。
しかし、問題はうつ病相の治療です。きちんと服薬して症状の波を起こさせないことが重要ですが、それでもうつ病相になることもよくあります。その時に、なかなか有効な治療がないのが現状です。うつ状態だから、抗うつ薬を投与すればと考えるのですが、効果はあまりなく、躁とうつの波を複雑にするだけで、時には躁転させるので原則的には投薬しません。

しかし、うつ状態が重症のケースではどうしたらよいのか。どうしてもの時は、抗うつ薬を投薬するケースもありますが、なかなか良い結果が得られません。

(3)再発予防
 双極性障害という病気は、長く上手に付き合っていく病気です。そのためにも少しでも再発を予防したいことになります。どうしても、寛解期になると通院を止めたり、服薬を中止したりしてしまいます。維持量として気分安定薬をきちんと服用することが再発を予防するための最善の治療法です。気分安定薬だけではなく、新規抗精神病薬を併用するとさらに、再発に対して有効的でありますので、適応症が追加になった現在、治療の選択肢は広がっています。

しかし、服薬をしなければ意味がありませんので、再発予防には薬物療法だけだは限界があります。患者さん自身や家族が双極性障害の知識を理解したり、規則正しい生活をしたりすることによって再発のサインをなるべく早く捉えることも重要となってきます。

 いずれにしても、双極性障害は、症状をコントロールして、上手に付き合っていくことが必要な病気です。間もなくうつ病相に対するオランザピンの適応症も追加になりますので、薬物療法の選択肢もさらに広がります。そのため今まで以上に双極性障害の薬物治療も期待ができるのではないかと思います。

【1月号】

■ 典型的なうつ病について

 今月は、今年の最初のメンタルヘルス講座ということもあり、もう一度典型的なうつ病を取り上げることにしました。この典型的なうつ病は、メランコリー親和型うつ病のことですが、最近では、非定型うつ病・新型うつ病など従来のうつ病と異なる病態のうつ病が増加して、典型的なうつ病の患者さんが少ない傾向にありますが、やはりメランコリー親和型うつ病を理解することが一番重要であるので、症状と治療についてまとめることにしました。

1.症状
≪こころの症状≫
気分が憂鬱
趣味や興味に関心がなくなり、楽しめない
意欲がない
イライラしたり、落ち着きがなくなる
集中力がなくなり、仕事などの能率が上がらない
自分を責める気持ちが強くなる
判断力などが低下する

≪からだの症状≫
眠れない
体がだるく、疲れやすい
食欲が低下する
頭や腰などからだのあちこちが痛い
微熱・寝汗などがある
便秘や下痢など
月経不順や性欲低下

 以上の症状は、代表的な症状です。このような症状がこころの症状及びからだの症状とも複数の症状が見られて、その症状が2週間以上毎日見られれば、うつ病の可能性があります。
日本人に多いパターンに、こころの症状があまり目立たずに、からだの症状が前面に出るケースがあり、これを仮面うつ病といいます。からだの症状ですが、内科的な治療をしてもあまり改善しません。それは、うつ病の部分症状に過ぎないため、うつ病の治療をしなければなかなか改善しません。

したがって、上記の症状をチェックすることにより、自分でうつ病の可能性があるかどうかをある程度判断することができます。うつ病の可能性がある人は、早急に医療機関を受診する必要があります。

2.治療

治療は、いろいろな治療法がありますが、十分な休養と薬物療法が2本柱であることは間違いがありません。特に休養は不可欠であり、逆に言えば休養だけで症状が改善することもあります。
しかし一般的には、薬物療法も必要でありますが、以前のメンタルヘルス講座でも取り上げましたが、うつ病治療の継続性が非常に低いことが問題になっています。

うつ病は、簡単にはならない疾患ではありますが、一度なれば再発をしやすい疾患です。したがって、しっかりと症状が改善するまで、たとえ症状が好くなっても、主治医がオーケーを言うまでは継続する必要があります。途中で治療が脱落して、症状が残遺している状態では、再発率が高くなります。休養や薬物療法でも症状が改善しなかったり慢性化した場合は、認知行動療法やデイケアなど、さまざまな治療法を組み合わせて治療を行う必要があると思います。